2019年 キヤノンギャラリー銀座額装ディレクション POETIC SCAPE 柿島貴志
素材 ステンレス鋼板制作 イーストウェスト
日本とその製造業で見受けられるギャップ。これに物語性を持たせて展示しました。ひとつめは、生きている鉄と美しく無機質な鋼の製品。ふたつめは、団塊の世代とミレニアル世代の技術者。そしてみっつめは、高度経済成長期と現代の環境についてを表現しています。
二次元に落とし込まれた景色は、積み重なれば三次元となります。集団としての人間が織り成す歴史の一側面は連続的であっても、個々の人生はその一時期を紡ぐことしかできません。線で接続する時間、点で交差する他人。引き継ぐという行為は全くもって容易ではありませんが、背景を意識するとつながりを感じられます。
絶え間なく鉄を産み出す製鉄所の中核施設、高炉は母胎にも例えられることも。「鉄は生きものだ」。先端技術で世界のトップを謳う日本の鉄鋼業ですら、そんな言葉が聞こえてきます。物を生きていると捉える感覚は極めて日本的。敬いと謙虚さにより、炉や鉄のわずかな変化も気づいて受け入れ、目標値へ近付ける努力をしています。
無機質で美しい鋼板の背後にある、繊細な母と向かい合う技術者たちの格闘を我々は知りません。匠による「技術や精神性の継承」と当時の町の様子などを通じて、日本の高度経済成長とは何だったのかを見つめ直しました。