2019年 ニコンプラザ銀座 フォト・プロムナード
自動車部品を生産する「金型」は大量生産のための装置ですが、型そのものを産み出すためには職人の手が必要です。両者のギャップを表すべく、静物写真として類型的に並べました。
大量生産という言葉を聞いて、何を思い浮かべますでしょうか。機械的、無機質、単調、冷たい――。できあがった工業製品だけを見ると、それは正しいと思います。しかしその裏で、確たる技術をもって丹精をこらした手仕事が製造業を支えているのも事実です。
日本を代表する産業である自動車。万を超すといわれる部品を高精度で安価に供給できるのは、「金型」と呼ばれる装置があるからこそ。鋼板を金型で連続的にプレス加工することで、一日に幾万の同じ製品が生み出されます。町工場で金型職人の手を見てみると想像に反し、まるで生き物を扱っているかのような繊細さがにじみ出ていました。――温かい、複雑、有機質、人間的。大量生産の現場には、こんな言葉もふさわしいのです。
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