かぜとつちと

book

 

translation into English

 

発売
2024年9月を予定。 進捗は公式SNSでお伝えします。
書名
かぜとつちと x elements
出版
赤々舎
装丁
中島 雄太
 

exhibition

 

2024. 4. 13- 5. 12 「陰と陽と」 
KG+SELECT 堀川御池ギャラリー


2024. 4. 25- 5. 26 「鐵と稻と」 
奥出雲葡萄園


2024. 9. 3- 16   「風と土と」 
ニコンサロン

 

陰と陽と

「この世界は、合理的な人の頭の中にある確からしさを考慮した、確率の微積分に従っている」 (物理学者 J・C・マクスウェル)
不確実性の高い現代に、連続する過去から未来を導く方程式は存在しうるだろうか。日本は戦後、製造業によって経済発展を遂げたが、その陰で人口分布が偏り、地方に過疎という課題を植えつけた。
西日本を横断する中国産地で分かれた南北の地域、山陽と山陰。両者は1960年代あたりからその典型的な道を歩む。 山陽のある街は世界最大規模の製鉄所を誘致し、人口は倍に積み上がった。発展とともに景色は面影を失い、かつてを想像するのは難しい。かたや山陰のある町は若者が吸い上げられ、人口が半減した。古来の製鉄法「たたら」や稲作の文化、神話の世界を色濃く残し、今につながる。
風景は過去における誰かの希望や欲望の帰結。背景を掘り起こせば逆算は可能となる。では現在を礎とした両地域の未来にはどんな眺望が広がるのだろう。

展示

2024
KG+SELECT 堀川御池ギャラリー
人の造り出した景色は、過去における誰かの希望や欲望の帰結。その背景を掘り起こして逆算を試みる。層として現れる20組の風景写真群

鐵と稻と

火を焚く。刃を研ぐ。地を耕す。 
鉄は強い組織を作り出し、
米炊く。縄なう。酒に酔う。 
稲は優しい社会を育んだ。
攻める。企む。手分けする。 
人は群れて多くを手にし、
祝う。語らう。慰める。 
集まることで分かち合う。

鉄と稲、集う力が積み上げた 
昔からの連なりを
流行り病が切り刻み 
街が若者吸い上げても
しかと根を張る営みに
呼び寄せられる人はまた。

出会う。つながる。受け入れる。 
未来へさらに豊かに紡ぐ。

展示

2024
奥出雲葡萄園
連綿と続く奥出雲の営み。雲南で採れた砂鉄に、仁多米を糊にして合わせ、安来で漉いた稲藁紙へ定着させたシルクスクリーン17点で構成

風と土と

人間と自然の営み、ひそやかに――。
激しい日照りの下、わたしは東京の喧噪を逃れ、古来の製鉄技術「たたら」の文化が残る島根の山あいを歩いていた。不意に心地よい風が、肌にまとわる汗をなでた。気づけばそこは集落の入り口。なるほど、ヒトの野性で地の利を生かした社会の発生を想像させる瞬間だった。
地域に通えば通うほど、自然は人間が操るものではなく、コミュニケーションの相手という認識がしっくりくる。今でも年中行事として、半夏生に刈った笹で巻く餅がふるまわれ、神在月のころ、杜に藁蛇が供えられゆっくり土へ還っていく。
豊かな風土の流転は、一方で人間に厳しさも教える。ツタや藪が空き家を覆い、過疎地に残された果樹が獣を呼び寄せる。生物の多様性や復元力が育まれるのは、土(守る力)と、風(変える力)が摩擦する場所なのだから。
止まらない少子高齢化に無力さを覚えたら、この視点に立ち返りたい。老いと若きが擦れ合う中で、農村と都市、双方の論理をわかり合い、課題を乗り越えられるのは、まさにこの地からであろうと。

展示

2024
ニコンサロン
気候、自然、社会——。有機も無機も関係なくそれぞれ「他者」との縁がもたらす豊かで複雑な島根のかたち。84枚の写真で紡ぐ静かな循環